こどもをもつがん患者でつながろう

花木裕介

千葉県 / 中咽頭がん / ステージ4

2018-12-10 18:48:30

精神腫瘍科・清水研先生を訪ねて。

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日記

ブログ記事『精神腫瘍科・清水研先生を訪ねて。』を書きました。よろしければご一読ください。

https://ameblo.jp/hanaki-yuusuke/entry-12424361348.html

(以下、本文転載)
こんにちは、がんチャレンジャーの花木裕介です。

先日、退社後に、国立がん研究センター中央病院(築地)を訪ね、精神腫瘍科科長の清水研先生とお会いする機会に恵まれました。

ご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、清水先生は、僕が以前本ブログで紹介した書籍『人生でほんとうに大切なこと』の中で、がん罹患者のメンタルに関わる良きパートナーとして登場されており、いつかお会いしたいと思っていました。

▼前回の書籍紹介記事はこちら
https://ameblo.jp/hanaki-yuusuke/entry-12396450673.html

その思いが叶って、この度、ご縁をいただくことができたという次第です。(Kさん、ありがとうございました!)



早朝より、強い雨と冬の到来を感じさせる寒空の続いたその日。僕の気持ちも、言葉では理由を説明できないものの、何となくどんよりしていました。

診察時間を終えた静かな院内。指定されたフロアから内線を掛けようとする僕に、すっと笑顔で近寄ってくる白衣の男性こそが清水先生でした。

国立病院の先生なのでやはりガードが固いのでは……という僕の予想はその瞬間あっさりと裏切られました。

先生のお部屋に通され、ご挨拶もそこそこに僕は、強く促されたわけでもないのに、自分の今の心境を初めてお会いした清水先生に話し始めていました。

「治療が終わっても再発・転移をはじめ、正直不安がなくなることはない。そういうものを徐々に受け入れているつもりでも、ふとした瞬間に、言いようのない不安にかられることもある。どこかで忘れたいと思っている自分がいる。ただ、その思いが、自分を新しい行動に駆り立てる原動力にもなっている」

そんなことをつらつらと話す僕を、清水先生は遮ることなく、ゆっくりと頷きながら、受け入れてくださいました。

伺えば、僕のように、治療が終わって復職したとしても、また別の悩みが生まれる方というのは、決して少なくないそうです。

治療中は、心理的に(部位を)攻撃する側にいるけれど、治療が終わり復職などすると、今度はその状態を維持しようと守りに入るため違う悩みも出てくるのではないか、ということで、それはまさに今の僕の状況そのものでした。



とはいえ、やはりがん発覚直後や治療中も、さまざまな悩みを抱えた方が精神腫瘍科を訪れるそうです。

大きくは2つのパターンがあるそうで、一つはすでに自己主張ができる方が意思を持っていらっしゃる場合。そしてもう一つが、家族や主治医が心配して勧めていらっしゃる場合だそうです。

特に後者の場合は、自分の気持ちを言葉にするのが難しい方が多いそうで、その場合は月単位で地道に関わっていかれるとのこと。

その方々が、自分と向き合う覚悟を持ち、自分の言葉で語りだすことで、自身の命に意味を見出したり、人生を肯定したりしていく。そして、ゆくゆくは独り立ちし、清水先生のもとを巣立ってゆく(もちろん、継続的に関わっていかれる方もいらっしゃるとのこと)。

そんなお手伝いをしていくのが、精神腫瘍科の役割なのだそうです。



僕自身はがん発覚から治療中、そして今に至るまで、勤務先の看護師や、福利厚生であるメンタルヘルスカウンセリングのカウンセラーに、精神的な支援を仰いでここまできました。

が、これは非常に恵まれたケースですし、このような環境を持つ方ばかりではないでしょう。

本格治療の前後は、たとえ病院にかかっていたとしても、とかく置き去りにされがちな患者の気持ち。そして、その患者を目の前にし、無力感を覚える家族の気持ち。

それらに焦点を当ててくれる人が病院の中や近くにいてくれることがどれほど支えになるかということを、清水先生との会話を通じて、この日改めて実感しました。

その重要性から、精神腫瘍科を置いている病院は年々増えてきていますし、中央病院の精神腫瘍科では、他病院に通院している方やご家族の方のお話を伺うこともあるとのこと。

このような環境が、もっと広く行き渡ることで、一人でも多くの方が、自身の病気に、そして人生に、新たな意味を見出だせるようになったらいいなーと思いました。



「今は3ヶ月に一度、経過観察のための検査をしています。そこでまた別の未来が待っているかもしれない。なので、僕にとって描ける未来はまだ3ヶ月先までなんです。この3ヶ月という期間をとにかく悔いなく生きるしかないんです」

エンジンがかかり、そう力を込めて語る僕に、清水先生はこう言ってくれました。

「僕たち(健常者)なんて、人生が永遠に続くものと錯覚して毎日をなんとなくすごしてしまいますが、花木さんのように『この3ヶ月を悔いなく生きる』という言葉を聞くと、ああそうだ、自分も一日一日を丁寧に生きなきゃ、頑張らなきゃと心から思います」 

この言葉を聞いたとき、僕は目の奥が熱くなるのを感じずにはいられませんでした。自分にとって当たり前の変えがたい事実。それを、そんな風に感じていただけただけでも、清水先生に伝えてよかった、と心から思えました。

最後に、「今日の出来事を記事にさせていただけませんか」という僕の厚かましい申し出を、写真撮影とともに快諾いただいた清水先生に、改めて感謝を申し上げます。

そして帰りの車中、お会いする前のどんよりが嘘のように、僕の心は晴れやかに澄み渡っていたのでした。

(了)

【ご案内】
清水先生と7人の患者の対話をまとめた一冊です。ぜひ手にとってみてください。

『人生でほんとうに大切なこと』(KADOKAWA刊・稲垣麻由美著)
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g321704000578/?ref=officialhttps://www.sangyoui.co.jp/news/blog/000063.html


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